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プロダクトデザイナーのデザイン思考ノート

数学との接点が黄金比だけのデザイナーは損をする

やや過激なタイトルかもしれませんが、「知らないのはもったいないよなあ」といった程度で受け止めてください。

黄金比や、それに関連するフィボナッチ数列白銀比等はデザイナーにとって大変身近な数学なのですが、それらについては今回触れません。

むしろ、それ以外にデザイナーのアンテナにひっかけるべき数学の美しさ、魅力について取り上げていきます。

ちなみに、私自身、数学という科目が得意かというとむしろその逆ですから、それだけに、今回特別難しい話をするわけではありませんので身構えず読んでもらえれば幸いです。

  • 心暖まる数学の世界

数学というと無機的でドライな印象を持っている方もいるかもしれませんが、そうではなく、心温まるようなトピックから入っていこうと思います。

友愛数という、異なる2つの自然数の組で、Aの自分自身を除いた約数の和がB、Bの自分自身を除いた約数の和がAとなる、特別な関係にある数の組み合わせがあります。

小説もしくは映画「博士の愛した数式」にも登場しますので、ご存知の方も多いと思います。

友愛数の中で、もっとも小さな組み合わせが、220と284です。

この、切っても切れない特別さが持つストーリー性を見せつけられては、反応せざるを得ないですよね。

結婚祝いとしてのギフトアイテムや、恋人同士のペアグッズなんかにピッタリじゃないでしょうか。

例えば、284mlと220mlのペアマグカップとか 笑

マグカップの容量としては250mlって結構ありますので、サイズ的にもバッチリ。

男性用がちょっと大きめ284ml、女性用がちょっと小さめ220mlとか、使用シーンを思い浮かべると微笑ましいです。

百貨店の売り場のお兄さんが、「実はね・・」なんて説明してくれたら、ひとたまりもなく買ってしまいそう・・という想像がとても楽しい 笑

ちなみに、友愛数を発展させた、異なる3つの自然数の組は「社交数」と呼ばれます。

もっと激しい名前に、「婚約数」というものもあります。

友愛数にかなり近いですが、異なる2つの自然数の組で、Aの自分自身と1を除いた約数の和がB、Bの自分自身と1を除いた約数の和がAとなるもので、一番小さな婚約数の組み合わせは48と75です。

熱いですね。

ここまでは他者(他の数字)との関係性の中にストーリーのある数字でしたが、

見事に自己完結してしまう数字もあります。

自分自身を除く約数の和が、その数自身と等しい自然数は、「完全数」と呼ばれ、小さいものから6、28、496、8128、33550336・・・と続きます。

さらに、自己完結について、別の捉え方をした数が存在します。

面白いですよ。

その名も「ナルシシスト数」

n桁の自然数であって、その各桁の数のn乗の和が、元の自然数に等しくなるような数を言います。

一桁の数字を除いて、一番小さい分かりやすい数が153です。

色々思いを巡らせてしまいますが、例えば153cmのスタンドミラー、googleで画像検索すると結構あります。

意図はしていないとは思いますが、意味深ですよね。

というか、意図していたら余計なお世話?笑

  • 数学者の美意識とデザイナーの美意識

ここからは、数字単独の話ではなく、数学そのものの話になっていきます。

ここで何が言いたいかというと、デザイナーが、素晴らしいソリューションに出会ったときに抱くであろう感動の感覚と同様の美しさ、スマートさを、数学の証明に感じ取ることができるということです。

早速話に入りますが、その最たるわかりやすい例が、義務教育過程の中で誰もが習う「三平方の定理」の証明です。

以下、心に響く解説をWikipediaより引用。

数学者は数学の証明方法において特に華麗さを評価する。 これは次のような文脈に依存する意味を持つだろう。

・最小限の既知事実や付加的仮定を使用した証明
・異常に簡潔な証明
・驚愕的な方法により結論を演繹する証明 (例えば、一見無関係な既知定理を用いた証明)
・新しい独自の洞察に基づく証明
・類似の問題群を解くための一般化が可能な証明方法

解法の美:多数の手段の中の美の発見

華麗な証明を模索する中で、数学者はしばしばある結論を証明するための複数の独立な方法に出会うが、最初に発見された証明方法が常に最良とは限らない。

おそらく最も多数の証明方法が知られている問題の典型例は三平方の定理であり、これまでに数百もの証明が公表されている。

解法の美は、 この定理の証明にもいくつか見られる。

上の図によれば、もはや文章や数式などを付与する必要は全くなく、図のみからその定理の成立がわかる。

簡潔であるとともに説明の必要無しに直感的な理解を形成する典型例であり、上で列挙した五つの華麗さのうち少なくとも最初の四つを具備する。

非常に多くの証明方法が見つかっている他の例として平方剰余の相互法則を挙げることができ、カール・フリードリヒ・ガウスによりこの定理に対して8個の異なる証明が公表された。

逆に、論理的に正しいが膨大な計算量を要するような結果、念入りすぎる方法、大変に平凡なアプローチ、あるいは非常に強力な定理や既知の結果を多数使用する証明方法は通常は華麗とは看做されないし、醜悪とか不器用と評価されるかも知れない。

ここまで読んでいただければ、先に述べた、「感動の感覚」を三平方の定理の証明の中に感じてもらえたと思います。

もうひとつ、ここで言われる「解法の美」というのは、デザイナーにとってみれば、「ソリューションの美」であり、「アイデアの美」でもあると考えられます。

「解法における5つの華麗さ」においては、難しい言い方がされていますが、良いアイデア、良いデザインとはすなわち、

・最小限のデザイン
・(異常に)簡潔なデザイン
・驚愕的な方法により(スマートに)目的を満たすデザイン (例えば、一見無関係な要素が効果的に結びついた発想)
・新しい独自の洞察に基づくデザイン
・類似の問題を解決するためのデファクトスタンダードとなり得るデザイン

と言い換えることができます。

デザインと数学の架け橋が、黄金比や白銀比、フラクタルのように、かたちに表すことができる点においてのみならず、根底的に方法論に対する美意識という点で一致していることは、結論だけ見れば当然のようにも感じられますが、とても興味深いことではないでしょうか。

数学者の美意識には、「美しいものは正しい」という美意識が存在するようで、それにまつわる話を少し書きます。

フェルマーの最終定理」という、350年間未解決だった問題が解かれ、一時期大変話題になりました。

この「フェルマーの最終定理」を解くために重要な役割を果たしたのが「谷山=志村予想」と呼ばれる予想であり、「谷山=志村予想」を解くことが、自動的に「フェルマーの最終定理」を解いたことになるというものでした。

実は、この「谷山=志村予想」というのが大変エレガントな予想で、あまりに美しいために、数学者に、「こんなに美しい予想が成り立たないのであれば数学をやめる」とまで言わしめたそうです。

「美しい」=「正しい」というのは、論理的には何の説得力も持たないはずなのですが、そんなことはどうでもよくなってしまうぐらい、ぐっとくるものがあります。

「美しい」=「正しい」は真であってほしいですし、これが偽である世界だとしたら、デザイナーやめてやる!笑

  • 数学の美しさはその普遍性にある

数学が美しい理由の一つはなんといってもその普遍性であり、新しい発見や進化が、過去を否定しないという点において、他に類を見ない完全さがそこにあります。

歴史も物理も経済も、定説が大きく覆ったり、常識が塗り替えられる経験を何度もしていますが、こと数学に関しては、一度証明されれば、日本にいてもアメリカに行っても、月に行っても火星にいっても、未来永劫崩れることのない、本当にユニバーサルな、永遠の真理となります。

そのこと自体がそもそも、もの凄いことなのではないでしょうか。

先程の友愛数の話も、数学という永遠の真理が根底にあるからこそ、文化や価値観によって異なる「縁起の良い数字」以上のロマンと説得力を持つと思うのです。

  • 数学の美しさを知り、感動して打ちのめされるには

世にも美しい数学入門」という真っ先にオススメしたい本があります。

小難しい話を抜きにして、数学的知識がなくてもスラスラ読めてしまう、気軽な本です。

第一部「美しくなければ数学でない」、第二部「神様が隠している美しい秩序」の二部構成で、数学に詳しい方であれば当たり前の話なのかもしれませんが、今まで苦手だった人間や、「美しさ」に敏感な人間にとって、非常に新鮮で面白い話だと思います。

「三角形の内角の和は180°」という当たり前の話ですら、読み手を引き込んでくれます。

これはよくよく考えてみると神秘的で、これが、179°や181° だったら、そこに美しさはないと思います。

これは、美的感覚をもった誰かが決めたことではなく、「あらかじめそう決まっていた」ことゆえに、感動し、美しいと感じます。

他に、「ゼロ」という概念が数学にとって画期的な発明であったことも興味深いです。

「ゼロ」なんて当たり前のものだと思っていましたから。

ゼロがないとき、たとえば、「100」はどう記述していたのか?

そのあたりの話も含まれています。

これを読み終えたとき、「もっと!」という気持ちになっていたら、先ほど触れた「フェルマーの最終定理」など読んでみて欲しいと思います。

数学の専門書ではなく、歴史読み物ですので、楽しく読めるはずです。

それではまた。

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コメント&トラックバック

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おもしろい。一読者、興味持ったよ。
文章に気使ってくれてるから読みやすいし。
ではまた。

2009 年 10 月 28 日 2:52 PM posted by jun

>>jun
その業界の人に読みやすいっていわれるとうれしいわ 笑
さらっと書けてるかと言えばそうでもないんだけど・・
精進します!

2009 年 10 月 30 日 11:47 PM posted by shimano