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プロダクトデザイナーのデザイン思考ノート

女子高生に学ぶデザイナーとして必要な翻訳力

「ダイエットすると言って、脳みそから減らしている。」

これは、テレ朝で紹介された、事業仕分けを見学したある女子高生の感想です。
「たとえが秀逸だ」ということで、はてなブックマークの人気エントリーに上るほど盛り上がっている様子。

ものの見事に多数の共感を得たこのたとえに、素直に「凄いな」と感心させられました。

事業仕分けに関する批判(仕分けをするという取り組みではなく、あくまでもその手法に関して)は至る所で見られます。

しかしそんな中で、何故このたとえがここまでの共感を集めたのか、「秀逸だ」とされる点はどこにあるのかについて、私の考えを書いていこうと思います。

  • 関連づけ—翻訳—驚き

「ダイエットすると言って、脳みそから減らしている。」
私は、このコメントが、デザイナーとして必要な能力を暗に示していると感じています。

その能力とは、メタファーを用いた翻訳能力。
この「翻訳」に関して、ジョン・マエダ氏は、著書「シンプリシティの法則」で、以下のように述べています。

デザインは、関係づけるという人間の本能を強化することによってはじまり、つづいて、関係を実態のあるモノやサービスに翻訳し、それから、見る人の努力を無駄にしないよう、最後にちょっとした驚きを付け加えるのが理想だ。
こうしたステップを略記するとこうなる:関係づける—翻訳する—驚かせる!

今回の女子高生のコメントが秀逸だとされる理由は、この、「関係づける—翻訳する—驚かせる!」という一連の流れが見事に上手くいっていることで説明できます。

そのことにより、よくデザインされたモノを見た時と同様の感動を、このコメントからも感じさせられるのです。

この女子高生のコメントを受けて、
http://2dimension.blog59.fc2.com/blog-entry-1331.html
には、以下のようなコメントがついています。

PCが重いからと言ってC:WINDOWSを消すようなもの
という例えを温めていたが、遠く及ばなかった。

この方が、「遠く及ばなかった」と感じた理由は、恐らくは、「関係づける—翻訳する」という点において、親近感の湧きにくいメタファーを選択してしまったことにあるのではないでしょうか。

また、以前「コピーライターに学ぶコンセプトメイキングでやってはいけない事」というエントリーで、「コピーは嘘をついてはいけない」ということを具体例をとりあげましたが、「PCが重いから」といって、「C:WINDOWSを消す」人間はまずいない点で、「コピーの嘘」になってしまったように思います。

「ダイエット」で「脳みそから減らす」ことも非現実的ではありますが、今回の仕分けでは、スパコンをはじめとする、科学技術関連事業や、教育関連事業に関する予算の大幅削減のインパクトが非常に強かったため、「科学技術、教育=脳みそ」という関係づけにおいて直感的に理解しやすかったことに加え、「脳みそからダイエットする」ことが、「嘘」ではなく「ユーモア」に置き換わったことが絶賛されている理由と考えられます。

  • 翻訳能力とは具体的に言えば何か

ジョン・マエダ氏の述べた、「関係づける—翻訳する—驚かせる!」力は一体何に起因するのか。
それを考えるヒントが、外山滋比古氏の著書「思考の整理学」にあります。
以下の引用は、「関係づけ」と「翻訳」のプロセスであると考えています。

思考の整理というのは、低次の思考を、抽象のハシゴを登って、メタ化していくことに他ならない。
第一次的思考を、その次元にとどめておいたのでは、いつまでたっても、たんなる思いつきでしかないことになる。
整理、抽象化を高めることによって、高度の思考となる。
普遍性も大きくなる。
「抽象のハシゴをおりろ」と命じたのは、一般意味論である。誤解の多いコミュニケイションを救うには、抽象のハシゴをおりて、二次的、三次的情報を一時的情報に還元するのが有効である。

「関係づけ」のフェーズは、見た事象Aを脳内で抽象化し、その抽象を媒体として、別の具象Bと結びつけることだと思います。
一度抽象化すること(抽象のハシゴを上ること)ではじめて、抽象のハシゴを降りることができ、インプットされた具象とは別の具象へと変化させることが出来ます。
この流れは、「具象A→抽象→具象B」と表すことができますが、具象Aの要素を具象Bに適切なかたちで落としこむことこそ、「翻訳」作業なのです。

タイトルを「女子高生に学ぶデザイナーとして必要な翻訳力」としたことの核心は、「具象A→抽象→具象B」という流れにあります。

よくブレーンストーミングで用いられる、ポストイットに絞り出したアイデアをグルーピングし、コンセプト(やりたいこと)を抽出し、それを元に次のアイデア段階に移る流れは、正にこの流れではないでしょうか。

  • 抽象的思考力を身につける

抽象的思考ができるようになるにはどうすればよいかについては、DESIGN IT! w/LOVE で、「メタ認知や抽象的思考ができない人が心がけ実践すべき3つの事柄」としてまとめられています。
項目としては、以下の3つが挙げられています。

・思考を文章や図にしてまとめるクセをつける
・あきらめずにむずかしい本を読む
・仕事のなかで自分で考え答えを出す

非常に面白い内容ですので、興味がある方は一度読んでみると良いかと思います。
最後に、「女子高生」に釣られた方、残念でしたごめんなさい 笑
それでは。

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