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プロダクトデザイナーのデザイン思考ノート

「シンプル」という落とし穴

プロダクトデザイナーを志す人間にとって、自分のデザインした製品を世の中に出す事はひとつの夢だと思います。

そして、フリーランスのスターデザイナーなんかはやっぱり憧れの対象であり、雇われの身では恐らく縁のないであろう苦労や困難を乗り越えて、デザインを具現化し、世の中に送り出すこと自体が凄い事です。

しかしながら、話題になるような「デザイン家電」と呼ばれる製品群に関して、人づてに、「あれは全然売れなくて、在庫の山に困っている」やら「そのおかげで生産したメーカーが困っている」といった良くない噂を耳にすることがあります。

その話が嘘か真かは知るよしもありませんが、そういった製品群は、誰が見ても一歩飛び抜けたカッコよさがあり、ipod以降、「すっきりシンプル、時に真っ白」は、一つのトレンドだったりします。

そういうモノを見て、「キレイだなー」「やっぱいいな〜」なんて思うわけです。

今でこそ考え方は変わりましたが、「なんでメーカーはこういう製品を出さないんだろう、出せばいいのに」なんて思っていた時期もあります。

なぜ出さないか」そして、仮に売れていないというのが本当であれば、「なぜ売れないか」それらについて、一つの結論が自分の中で出ているので、考えをまとめる意味でも、そのことについて書いてみようと思います。

やっぱりそういうフリーランスの方の活躍こそが希望ですので。 笑

さて、本題にはいると、広告業界やマーケティング業界には、「シズル感」という言葉があるそうです。

主に飲食関連の広告で使用されることが多く、ざっくり言えば「おいしそう」な感じのことです。

肉が焼ける音を意味する「sizzle」という英語がもとになっています。

雑誌広告やCMを見ていると目や耳にする、ビールの蓋を空ける音や、キンキンに冷えた雰囲気を醸し出す水滴等の表現、ミルクが垂れるまろやかなイメージだったり、おでんが煮えるグツグツする音などは、このヨダレが出そうな「シズル感」を狙っていると言えます。

「シズル感」を味わってみましょう↓

どうですか?つばが出てきませんか?

消費者の本能に直に訴えかけるわけで、その効果は抜群です。

プロダクトデザインの領域でもこの言葉を使えば、もやもやとしてうまく言えなかったことがすっきりしそうな気がします(自分が知らないだけで、みんな使ってたりして 笑)。

「形態は機能に従う」という有名な言葉がありますが、プロダクトデザインにおける「シズル感」の表現とは、機能はもちろんのこと、「性能」をどれだけかたち(可視化)にできるか、ということだと思います。

当然と言えば当然ですが。

「食べ物」が機能だとしたら、「おいしい」は性能です。

広告業界では、この「おいしい」という性能をできる限り魅力的に見せようと努めています。

プロダクトデザインでは、炊飯器を例にすると、「ごはんを炊く機械」ということを伝えるではダメで、「どれだけおいしいご飯が炊けるか」というところが重要です。

もともとの意味を拡大解釈すれば、「掃除する機械」でなく、「良く吸う」「排気がきれい」といったこともきっちり伝えなければいけません。

機能を満たすための極限のシンプル。

これは理想のゴールかもしれませんが、そこにプロダクト的「シズル感」がないと、消費者は安心して購入に踏み切れないのだと思います。

家電製品において、性能の大部分はエンジニアに依存しています。

性能という点においては、メーカーは消費者から一定の信頼を得ていますが、フリーランスの独自ブランドではその後ろ盾がありません。

真っ向勝負をするつもりはなくても、家電市場では、常に一歩不利な状況からの勝負になってしまうのは否めないと思います。

雑貨や家具など、形態が性能を引き出しやすいフィールドでは、デザイナーのヒット商品が多いにもかかわらず、家電となると、そういった商品が少なくなるのは、そういったところだと思います。

さらに言えば、家電の中でも電話機などは、見た目が気に入ったものを買って失敗する恐れはあまりありませんが、衣食住などのQOLにモロに影響してくるところだと、性能的信頼が得られていない無名のブランドのものを買うのはやはり怖いです。

ファッションアイテムや雑貨から遠のき、生活に密着してくる家電製品ほど、フリーランスのデザイナーが挑戦するには難しい領域なのかもしれません。

そこで大手メーカー製でなく独自ブランドのモノを選んでもらうためには、「美しい」のは当然として、「シズル感」でも上をいき、技術的、性能的なイメージの差を埋めるという高いハードルをクリアする必要があるのだと思います。

「シンプル」という落とし穴、というタイトルですが、シンプルを否定するわけでは決してありません。

ただ、大手メーカーのモノのほうが、UDはもちろんのこと、このプロダクト的「シズル感」を大切にしている気がします。

必要な「シズル感」をもたせた上で、不必要な要素はうまく取り除いた「シンプル」を実現できたならば、強いメッセージを持ち、洗練された魅力的なモノになるのだと思います。

誠実とは言えないかもしれませんが、あくまで商業的なことを考慮すると、こういうことが必要なのかも、という話でした。

ただ、クライアントを幸せにできなくて、世の中を幸せにできるかと考えると、何か違う気がします。

最後に、dysonが生活に密着した掃除機という分野に参入し、生き残り、勝ち抜いて来た理由には、技術的な革新性はもちろんのこと、「なんか吸引力ヤバそう」という強烈な「シズル感」を一貫して出し続けたことがあるのかな、と思っています。

ちょっとえらそうなこと言ってすみませんでした。

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コメント&トラックバック

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これはとても重要だ!!
服でも全く一緒の事がいえるー!!
ありがとう!!!
しまちゃんの書き方好きっす。

2008 年 12 月 23 日 11:44 PM posted by itaroots

共感してもらえてうれしいです!
ダブルでコメントありがとう!

2008 年 12 月 27 日 2:46 AM posted by shimano