デザインにおける味わい ー前編ー

モノやコトに触れたとき、感想として、「いいよね」という言葉を口にすることはよくあることと思います。
デザイナーとしては、その「(なんか)いいよね」というのは禁止したいところですが、それは今回はおいておくとして、「いいよね」という場合、概して、何がいいのでしょうか?
かたち?色?機能?性能?サイズ感?質感?コンセプト?
その問いに自分なりの答えを出すべく、今回は、「良い」ということそのものを掘り下げて考えてみたいと思います。
おそらく、それらの関係比率はモノ・コトにおいてかなり異なり、加えて、一言で言い表すことが困難であるが故に、漠然と「いいよね」と言ってしまうのであり、また、必然なのかもしれません。
かたちだけがいいわけでもなく、色だけがいいわけでもない。
「いい」と言うことは、「好ましい」と言っているにほぼ等しいと思いますが、個々の「好み」に合っているからこそ、惹かれるのでしょう。
憶測ですが、「好み」というのは、もともとは「好味(この・み)」なのではないかと考えています。
「味(あじ)」というのは、そもそも味覚で感じるもののように思われますが、「あの人はいい味出してる」とか、「味な真似を」といったように、味覚では感じることの出来ないはずのことがらに対しても、「味」という表現が用いられています。
味覚は、生理学的には、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つが基本味に位置づけられますが、それらを用いた表現の例としては、「甘いメロディー」「苦い思い出」うま味に関しても、得をする意味で「おいしい」と言ったりします。
「おいしい」というと、味全体としての表現と捉えられなくもないですが、うま味に関してより直接的でわかりやすいものだと、インターネット上では「ウマー」という表現が使われていたります。
何かを買うときや、どこかへ行くとき、その選択は少なからず好みに依存するのならば、広義での「味」というものを、デザイナーは深く考えてみる価値があると思います。
有名な哲学者・中村雄二郎氏も、その著書「共通感覚論」において、
日本語でも西欧語でもそうだが、ものの全体的な好みを「味」(趣味)というのも、好き嫌いと味との密接な関係を示している。
と述べられています。
また、「興味」があるから買ったり行ったりするということや、迷っている状態では「吟味」する、「加味」するといったことがあり、本当の面白さや、神髄を指して「醍醐味」(本来仏教用語で、醍醐は、牛や羊の乳を精製した濃厚で甘みのある液汁)と呼びます。
冒頭で、「一言で言い表すことが困難であるが故に、漠然と「いいよね」と言ってしまうのであり、また、必然なのかもしれません。」と書きましたが、これは、「良さ」というものが、様々な要因が複雑に、そして深く絡み合っているからこそのことで、それらを簡潔に言い表そうとした結果、感覚の統合的表現としての「味」に至ったのでしょう。
「〜テイストな」といった表現や、「〜風な」という表現も「味」に関連した表現だと思います。
「〜風な」という表現の「風」は気象学的な「風(かぜ)」というよりは、「風味(ふうみ)」に近いと考えるほうが自然な気がします。
風味(Flavour)というのは、食品を口に入れた時に生じる様々な感覚をまとめて指す用語であり、「〜風な」という表現自体、他には一言で表現できない複雑なニュアンスを持っていることを示していると思います。
デザインについて、コンセプトは明瞭さを必要としながらも、考慮すべき点、果たすべき役割は多岐にわたり、今もそのフィールドは拡大を続ける時代です。
ハードウェア、ソフトウェア、ユーザビリティーはもちろんのこと、サービスやコミニュケーション、マネージメント、また、「グランドデザイン」という言葉も生まれています。
こんな時代ですから、見た目の形の良さだけにとどまらず、様々な問題解決を目的とし、多様な学問領域の橋渡しとしての意義をもつデザインを目指すならば、「良い」デザインとは何か?「好ましい」デザインとは何か?という問いに答えるヒントが、複雑なニュアンスをたった一言の中に含ませることが出来る、広義の「味」という言葉に秘められているのだと考えています。
2回に分けることになりましたが、次回は、「デザイン」を中心に据えて書こうかと思います。
つづく






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こっ後半が気になる!!
2009 年 5 月 31 日 6:37 PM posted by H
[...] デザインにおける味わい ー前編ー から随分あいてしまいましたが、再開したいと思います。 [...]
2009 年 6 月 17 日 11:49 PM posted by デザインにおける味わい ー後編ー | H2O MAGAZINE