H2O MAGAZINE

  • BLOG
  • WORKS
  • LINK
  • ABOUT
プロダクトデザイナーのデザイン思考ノート

結局のところユーザーの声は「不要」なのか

結局のところユーザーの声は「不要」なのか

ユーザーの声を聴いても新しいものは生まれない」という一方で、「ユーザーの声を聴いて新製品がヒット!」のような話を聞きます。

この両方を聞くと「ユーザーの声は要るのか要らないのか?一体どちらが正しいのか?」と言った疑問が生まれてもおかしくありません。

しかしこの問い「ユーザーの声は要るのか要らないのか」は、単純にYes/Noで答えられるものではないはずです。

これらは矛盾する命題ではありませんし、「ユーザーの声など要らない!」と割り切ってしまうのも、ユーザーの声に頼り切ってしまうのも、両方とも危険だと考えています。

ユーザーの声を聴くのが効果的なのはどのような時か?

つくり手が自分を信じてモノやサービスを生み出さねばならないのはどのような時か?

これらの場合分けをしっかり考える必要があると思います。

世の中で言われている様々な法則や理論には、基本的に例外が存在します。

重要なのは「例外はあるのか」「例外が発生したのはどのような状況か」を考えることです。

そうすることで理論は精度を増し、磨き上げられていくものです。

  • ユーザーの声を聴いても新しいものは生まれない

これと同様のことは、多くの著名な経営者やデザイナーが述べていますし、多くの方が賛同するところと思います。

ここでいう「新しいもの」とは、「革新的なモノやコト(イノベーション)」を指していると捉えて話を進めます。

「ユーザーの声から革新(イノベーション)は生まれない」ということについては、初めて「イノベーション」を定義した経済学者シュンペーターが、著書「経済発展の理論」の中で以下のように述べています。

経済における革新は、新しい欲望がまず消費者の間に自発的に現れ、その圧力によって生産機構の方向が変えられるというふうにおこなわれるのではなく—われわれはこのような因果関係の出現を否定するものではないが、ただそれはわれわれになんら問題を提起するものではない—、むしろ新しい欲望が生産の側から消費者に教え込まれ、したがってイニシアティヴは生産の側にあるというふうにおこなわれるのがつねである。

  • ユーザーの声を大切にする

大切なのは、イノベーションとよい製品を混同しないことだと考えています。

ユーザーの声からイノベーションは得られなくとも、よい製品をつくり出すことはできると考えるのが妥当です。

そうでなければ、「ユーザーの声を大切にしてヒットしました!」ということの説明がつきません。

ユーザーの声を大切にする必要性が叫ばれているのは、それに応えようとするあまり迷走しかねない危険こそあれ、やはりそれが改良改善のためには役に立つものだからだと考えられます。

シュンペーターは当初、イノベーションのことを新結合を呼んでいましたが、非連続的な新結合と、漸進的 / 連続的な歩みを区別していました。

生産をするということは、われわれの利用しうるいろいろな物や力を結合することである。生産物および生産方法の変更とは、これらの物や力の結合を変更することである。

旧結合から漸次に小さな歩みを通じて連続的な適応によって新結合に到達することができる限りにおいて、たしかに変化または場合によっては成長が存在するであろう。

しかし、これは均衡的考察方法の力の及ばない新現象でもなければ、またわれわれの意味する発展でもない。

以上の場合とは違って、新結合が非連続的にのみ現れることができ、また事実そのように現れる限り、発展に特有な現象が成立するのである。

よい商品というのは、革新的なものも確かにありますが、一方で漸進的かつ連続的な歩みのものも含んでいます。

むしろ大半は後者でしょう。

有名な言葉ですが、シュンペーターは「資本主義・社会主義・民主主義」の中で、不断に古きものを破壊し新しきものを創造するイノベーションの特徴を「創造的破壊 (Creative Destruction)」と読んでいます。

これは、後のクリステンセンの「破壊的イノベーション」の概念に継承されていると思われます。

「よい商品 = 破壊的」かと言えば決してそうではありませんが、しかしだからと言って、漸進的 / 連続的な歩みをないがしろにできるはずもありません。

ある種類の製品群がユーザーにとって性能過剰に陥っているときにこそ、破壊的イノベーションが必要であると同時にそのチャンスでもあるわけですが、次の段階、登場した破壊的イノベーションの機能や性能を引き上げ、より良いものにしていくのは漸進的 / 連続的な歩みです。

ユーザーの声というのは、基本的には既にある製品に対する不満が大半だと思います。

ユーザーの声をそのまんま受け取るのか、その背後に潜む意味を拾い上げるのかで結果に違いこそあれ、「この製品のこういうところをなんとかして欲しい」という既存のものベースの考え方は、イノベーションこそ生み出さないかもしれませんが、改良 / 改善のヒントにはなり得るのだと思います。

ユーザーの声が要るか要らないかについては、「必要なのがイノベーションなのか、改良 / 改善なのかによる」というのが今の私の見方です。

「ユーザーの声は大切」「ユーザーの声など要らない」の間でもやもやしていたくはないので、自分なりにこたえを出してみたいと思っていました。

面白いのがどちらかはいわずもがな、といったところでしょうが。

にほんブログ村 デザインブログ プロダクトデザインへ
ブログランキングに参加しています

コメント&トラックバック

トラックバックURL: http://www.h2omag.net/product/769/trackback/

素敵な内容です。
内容を見て大変勉強になりました。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。

URL:http://www.api.com.tw/
MAIL:hold.ph@gmail.com

台湾和漢翻訳会社より

2011 年 12 月 6 日 12:15 AM posted by 台湾和漢翻訳会社